肩口の冷たさに、アラームが鳴るよりひととき前に目が覚めた。
布団をぐっと首元まで引き上げて、再びうとうとする。
目覚しのアラームが鳴った。
二度目のスヌーズを止めて、ゆっくり上体を起こす。
ベッドサイドに座りながら右手でサッと窓辺のカーテンを開けると、朝日がきらめいて、世界一面に白々と霜が降りていた。
今朝は冷え込んでいる。
家人はこんな寒さにも忙しく家事をこなし、バタバタと職場へと出かけて行った。
わたしは一人でゆっくりと朝食を食べ、ふた月ほど前に解禁された納豆のおいしさに小さな幸せをかみしめる。
それにしても、今朝は寒い。
食後の薬を飲んで、洗い物をして、炬燵に入ると、また横になってまどろもうとする。
そういえば、こんな寒い冬の朝、わたしも早起きしてお弁当を作り、仕事に出かけて行った一時期があった、と思い出した。
制服がスカートで、今日みたいな冬の朝は、ヒートテックのタイツを履いていても、とにかく足元から冷え、寒かった。
でも、あの時は一所懸命で、わたしは毎日突き進んでいた。
朝の空気は澄んで、わたしを磨いてくれているようだった。
毎日出勤して、働いて、学んで、疲れ切って帰宅した。
へとへとになって眠りについて、短い眠りの翌朝、また意を決して出勤した。
あの日々は、いったい何だったのだろう。
今となっては幻のような、夢のような一時期。
あの時確かに、わたしは生き生きと生きていた。
もうあそこには戻れない。
あそこには、戻らなくていいんだ。
もう、無理はしなくていい。
ゆっくり生きればいい。
先々を考えれば、今度はわたしが家事を一手に引き受ける日が来るかもしれないという点で、仕事とは違う大変な日々がやってきそうな気もするが、その時はその時で、また早起きをしてがんばってみよう。
身を切るような冬の朝の冷たさに磨かれるように、わたしの生を、次は身近な家人に捧げることになるのだろうか。
どうかそれが為しうるように、この身が守られ、この心が強められますように。
そう祈り、そして、日差しを受けた部屋で安心のうちに昼までまどろんでいた。