うたたねモード

セミリタイア?っぽく生きてみる。


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お稽古始は大寒波の中で

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残雪の露地 

数日前に降った雪がまだそのまま庭先や路肩に残る中、24日午前、今年のお茶のお稽古始に集った。

 

雪かきされたアプローチの先、茶室の手前露地にはいつもと変わらずつくばいに水が落ちている。

茶室に入り、菓子器に菓子を並べるなど、少し裏方のお手伝いをする。

 

そうこうしているうちに時間になり、生徒が皆そろった。

 

 

お稽古始 

お稽古前のご挨拶。

 

席入り

席入りで畳をすすみ、掛け軸を拝見。

 

春入千林處々鶯

(ハルはセンリンにイり ショショ ウグイス)

 

茶室の中はもう春に包まれようとしている。

床柱の花入には、紅白の椿、そしてまだ芽吹いていない柳の長い枝を結わえ流した結び柳が飾られている。

歩をすすめ、お釜の拝見。

重々しいどっしりとした釜が座っている。

その周囲に松竹梅の蒔絵がほどこされた炉縁がめぐる。

畳を戻り、正客の下座、次席に入る。

 

炭点前の見学

年下のベテラン先輩が炭点前のお稽古をすることになり、近づいて見学する。

よくわからないけれど、お釜をよけて炭を直すようだ。

羽で炉縁の下を掃いて、何種類かの炭をついでいく。

 

炭の立て方がある!?

炭に名前がある!?

 

びっくりしながら見学する。

 

よけておいたお釜を直した炭の上に据える。

 

しばらくして次項の薄茶点前が進んだころ、炉からパチッ、パチッと炭が燃える音が聞こえてきた。

茶室内の炉で、静かに、そして確かに、炭火が燃えていることに感動する。

 

薄茶点前

ベテラン先輩による薄茶点前が始まる。

お菓子がまわってくる。

お菓子を取って下座に送る。

茶筅通しの辺りで、お菓子をいただく。

干菓子の小さな和三盆が超絶おいしい。

 

先輩のお点前をじっと見つめる。

お釜が時折、シュンシュンと音をあげる。

亭主がお釜のふたを取ると、もうもうと湯気が立つ。

柄杓で湯を汲む。

ふたを閉めると、また時折シューと音をあげる。

釜の湯がよく沸いている。

先ほどの炭点前はこの瞬間のためにあったのかと気づき、感心する。

 

正客に薄茶が供され、次はわたしの番だ。

亭主の畳の縁外に薄茶が置かれる。

今まではそれを先生が運んでくださっていたが、今日は自分で取りに立つ。

 

その際は、一束立ち(いっそくだち)。

両足をそろえてかかとを立て、そのままゆっくりすっと立ち上がるものだ。

 

これができない。(>_<)

無理!

ムリムリムリムリ、ぜったい無理です!

 

でも行かねばならぬ。

意を決して、立ち上がる。

すっと…はいかなくて、ヨロヨロ、グラっとしながら。(・_・;)

 

なんとか立ってすすみ、お茶碗の手前でいったん座る。

お茶碗を手に取る。

薄茶の入ったそのお茶碗を両手に持ったまま、立ち上がらねばならない。

一束立ちで。

 

気持ちはすっと。

だが上体が揺らぐ。

こらえる。

あ、片足をちょっとズラしてしまった。(ダメだ、流派が違ってしまうよ…)

でも、こらえる。

なんとか立ち上がる。

 

あぶない、マジあぶない…

 

ここで転んだら大惨事だ。

あー、ほんとにこれはつらい。

今のところ、この一束立ちが難関なのだった。

 

そろそろと席に戻り、居ずまいを直して。

薄茶をいただく。

ほんとうに、おいしい

 

お茶碗を拝見した後、返しに行く。

お茶碗を手にして、また一束立ちだ。

 

こらえる。

こらえて、なんとか立ち上がる。

 

あぶない、マジあぶない…

 

立ち方、座り方の練習をしないといけない。

絶対的に脚力が足りない。

筋トレが必要だ。

筋力あってこそ、はじめて成立する美しい立ち居振る舞い。

弱々な自分にはそれさえ難しい。

 

ただ、お稽古あるのみ。

そのためのお稽古である。

 

茶筅通しの割稽古

見学者二名を含め、四人の客の薄茶が終了したところで、少し足を直してブレイク。

 

ほどなく、わたしと少し先輩の二人は茶筅通しの割稽古となった。

薄茶点前をするとき、お茶を点てる前に茶筅(お茶をシャカシャカする道具、竹製)を湯に通す動作(茶筅通し)があるのだが、その部分だけをお稽古(割稽古)する。

茶筅通しには、茶筅を清め穂先が折れていないかを調べること、折れやすい穂先を湯に通して柔らかくすること、などの意味があるという。

なるほど。

 

いーちー、コトン、くるり。

にーいー、コトン、くるり。

さーんー、コトン、くるり。

しーいー、サラサラサラ、「の」の字、茶碗から引いて横に立てる。

 

みたいな。(笑)

わたしにはこれだけでも難しい。

先生から、おうちでも練習しておくように、と仰せつかる。

 

薄茶点前、二服目

割稽古の最中に、見学の二名が帰り、入れ違いで別の生徒さんが遅れて来た。

もう三年ほど習っているという。

二服目は、その生徒さんのお点前で薄茶をいただく。

いつもお茶を点ててくださる年下のベテラン先輩も、久方ぶりにお客となる。

その先輩、その日は少し体調がすぐれなかったようだ。

正客、次客のわたしとお点前がすすみ、最後に末客のベテラン先輩へ薄茶が供される。

 

薄茶を口にしたベテラン先輩が、ひと言。

 

「あぁ、おいしい、ホッとします」、と。

 

その言葉を聞いた先生は、

 

「ホッとした? ほんとにね、、、涙が出ちゃうわね」、と目頭にそっと手をやり。

 

もうほんとに、なんてあたたかい。

そして、なんだかわけのわからない感動に包まれて。

わたしもウルウルと涙目。

 

この一瞬のために、皆でお茶をいただいていたのかもしれない。

 

お茶を介した、人と人、場と空気とのつながり。

そんなものを感じて、心があたたまる。

わたしはまだお茶を始めたばかりのひよっこだけれど、お茶の世界の一端に触れたようで、ただ心を打たれていた。

 

帰途

午前10時にお稽古が始まり、終わったのは午後1時。

三時間、皆がひとつになり、無になっていた。

 

お稽古が終わり茶室の玄関を外に出ると、残雪をなでた凍てつく風が吹きつけて、吐く息が白い。

折しも今週は何十年ぶりという大寒波が訪れている。

 

みなさん、また来月のお稽古でお会いしましょう。

それまでお元気で。

失礼します。

 

そう言い交わして、それぞれが胸になにかを抱きながら、足早に家路についた。

 

 

 

日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ (新潮文庫)

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